Everyday prototyping (研究/進路メモ)

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Everyday prototyping

この言葉に出会ったのは、Adobeが主催したイベントの最終日である。

とにかく作ってみて、実装し、試行錯誤を繰り返す。
これが重要であると、端的に述べた言葉だ。

イベント参加以来、この言葉はずっと座右の銘として、体現し続けている(つもりである)。

この言葉を強烈に意識させる出来事があった。

先日、大学院の卒業生とのオンライン懇談会があった。卒業生は霞ヶ関で働いており、日々政策の最前線で戦っている人々だ。彼らから様々な興味深いお話をお聞きすることができた。

ワクチンの事例や、デジタル庁の事例など様々なお話の中で、今後の行政サービスに求められる要素に関することがあった。

今後行政サービスにはUI/UXが求められる、つまりサービスを作った後に、どのようにしてサービスを届けていくのかという点が今後重要になっていくということだ。

行政の宿命なのかもしれないが、一度作ったものを作り直すには時間がかかってしまう。今後はこのような状態を改善し、住民に対して行政サービスが届き、活用される状態が生み出されることが理想の状態である。行政におけるアナログさ加減は格好の批判対象となっていたが、2021年9月1日にデジタル庁が発足し、行政におけるデジタル化が進む機運が高まった。デジタル庁は民間のエンジニアやデザイナーも入っており、これまで公務員にはいなかったような属性の人間がいる。

デジタル化とは紙が電子化されるだけではなく、既存のルールや慣行を打ち砕く行為である。コロナ禍でハンコの話題が世を賑わせたことが懐かしいが、ハンコが廃止された場合、ハンコ業界がこれまで得ていた利権が失われることになる。デジタル化とは規制改革、行政改革そのものであり、行政特有の「縦割り」を破壊することに等しいと言っても過言ではない。デジタル化の総論には賛成、しかし各論に目を向けると反対という声が上がることが容易に想像できる。

懇談会の中で、ワクチン接種記録システム(VRS)に関するトピックが取り上げられた。VRSは毎日情報が更新され、その都度システムの仕組みや運用に修正が加えられていたそうだ。これは行政としては異例の取り組みであり、最近流行りのEBPM(Evidence-based Policy Making 証拠に基づく政策作り)をまさに体現したものであり、極めて短いスパンで政策を更新し続けた稀有な事例であると言える。新型コロナウイルスの流行は様々な場面のオンライン化を押し進めた。これだけでなく、ワクチンの事例のように今後の政策運営の試金石となるような結果を生み出すことにもなった。

これまで行政サービスは上から下(トップダウン)で行われており、そのサービスを使う人がどのように思うのか(使いやすさ、サービスから得られる経験)についてはあまり注目されてこなかった。デジタル庁によって、従来の当たり前が破壊され、新たな当たり前が誕生するのかもしれない。

行政にもEveryday prototypingの姿勢が求められ、日々試行錯誤していかなければならない時代が到来するのかもしれない。夏休みに参加していた霞ヶ関インターンシップの中で「公務員はこれからクリエイティブな仕事になる」という話をされていた職員がいた。その時はいまいちピンと来なかったが、今回の話を聞いてようやく全てが繋がった。確かに公務員にはこれからクリエイティブな要素が付加されていくのかもしれない。

自分ができることは何か。

「行政官」として何ができるのか。

こんなことを考えながら、引き続き公共政策大学院でEveryday prototypingを行っていきたい。

いよいよ明日から11月。

今月も道内各地でフィールドワークを行う予定だ。忙しくなる。

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